2017年6月18日日曜日

ご神託 

「どちらにしようかな、天の神様の言う通り」
 律儀な天の神様は、子どもの声が聞こえると「こっち!」と、指さす。
 しかし、子どもが天の神様の言う通りにしたことはない。一度だってない。
 ぽたり、雨粒が落ちる。子どもが空を見上げて「神様が泣いてるねえ」と言う。
 途端に雨が強くなった。

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「もうすぐオトナの超短編」峯岸可弥選 投稿作
兼題部門(テーマ超短編「暴力」)

2017年6月9日金曜日

六月九日 たんぽぽがシャボン玉

バスで隣り合ったおばあさんと話し込む。おばあさんは、お連れ合いの介護で大変だそうだ。
私は頭に季節外れのたんぽぽが咲いて大変なのだとこぼした。
すると、おばあさんは私の頭を撫でて、あっという間にたんぽぽを綿毛にして、「ふう~」と吹き飛ばしてしまった。
バスの車内は綿毛だらけ……にはならず、シャボン玉だらけになった。
私がバスを降りるとき、おばあさんは「気を付けていってらっしゃい」と何事もなかったように手を振ってくれた。頭にたんぽぽが咲くのも悪くない。