2015年1月21日水曜日

或いは歯の夢


 歯と歯茎だけの存在である私を、貴女は受け入れてくれましたね。
 貴女は私の歯茎を、指で、舌で、そっと何度もなぞりました。
 私に喉まであれば、歓喜の声を上げたのに。
 お礼をしたかったけれど、貴女の控えめな乳首を甘く囓ることしかできませんでした。
 私はいま、歯科診療室の戸棚の上に軟禁されています。
 真夜中 の診療室で、この手紙を書いています。
 強い噛み跡のついた鉛筆に、明日の朝、歯科医が気がつくでしょう。

妄想二人展出品作