2013年11月21日木曜日

奇行師と飛行師10

ヒールが鯨怪人に突き刺さる。「何をするんだ、奇行師。あ、奇行師、ひさしぶり」


鯨怪人は突き刺さったハイヒールを引き抜いて、奇行師に返した。


「おれも一緒に連れて行っておくれよう」


奇行師と蝸牛男が、歓迎の舞を背中で踊るので、飛行師はなんども墜落の危機を感じたが黙っていた。


「鯨怪人は、ヒトですか、クジラですか」と蝸牛男が聞いた。


「同じ質問をそっくりそのまま返すよ。あ、蝸牛男、はじめまして」


鯨怪人と蝸牛男はとても気が合ったようだ。


 


飛行師は、だんだんと本物の飛行機に近づいているような気がしてきていた。


変人を三人も背中に乗せて飛行しているのだから、もうただの飛行師ではない。


海上すれすれではあるけれども。



2013年11月13日水曜日

奇行師と飛行師9

突然、飛行師の身体が持ち上がった。上空へ高く高く。喜ぶ奇行師と蝸牛男を尻目に飛行師は騒ぎ出した。


「オレは飛んでいない!」


蝸牛男が下を覗きこむと、鯨の格好をした人間か、もしくは人間の格好をした鯨が吹いた潮によって、一行は吹き上げられているのだった。


「やめろ!鯨怪人!」


「鯨怪人? 奇行師の知り合いなのか?」


「祖父の叔父の従兄の上司の息子だ」


奇行師は鯨怪人に、赤いハイヒールを投げつけた。



2013年11月5日火曜日

奇行師と飛行師8

地上低く飛ぶことがうまくなってきた飛行師は、海に出た。


波しぶきをかぶりなんども墜落しそうになるが、飛行師は広々とした海上の飛行を楽しんで「ひゃっふへイ!」と、奇声を上げ続けていた。


奇行師と蝸牛男はいよいよ動転し、奇行師はハイヒールで耳栓をして念仏を唱え、蝸牛男は粘液を出しながら飛行師の背中の上で右往左往しいる。