2012年7月3日火曜日

切り取られた男

ハサミを使えるようになったばかりの四歳の坊やは、紳士服の広告から髭の男を切り取った。


坊やは真剣にハサミを使ったが、どうにもギザギザの男になってしまったので、母にもっと綺麗に切ってくれるよう頼んだ。


そのせいで、髭の男は少々小さくなった。


それでも広告から自由になった男は、坊やの元をあっけなく去った。不本意なスーツではなく好きな格好をしようと考えたのだ。


しかし、男が着られる服というのは、紙でできた着せかえ人形のものだけだったので、男は仕方なく白いワンピースを着ることにした。


そんな男を「かわいい!」と女の子が拾った。女の子はたくさんの服を持っていたから、男はピンクや黄色や水色のワンピースを次々着させられた。


坊やの元に帰る方法は、わからなくなってしまった。