2011年9月14日水曜日

魚の昇降器(エレヴェーター)

どこの世界でもエレヴェーターボーイやエレヴェーターガールが、子供たちの憧れなのには代わりない。
魚の世界も然り。
稚魚たちの遠足のために設けられた昇降器は、深海から海面を探索し、見聞を広めるためのものである。
「水深200メートル、ここから先は深海になります」
エレヴェーターガールのにこやかな声に、稚魚たちの緊張が高まる。
「あ、デメニギスさんがやってきました。皆さん、幸運ですね。デメニギスさんは、私も初めてお目にかかります」
「デメニギスさん!」
稚魚たちの歓声に、デメニギスは透明な頭をこちらに向けたが、そのまま静かに去っていった。
「さて、今度は海面に向かいます。人間の針や網に気をつけて上がりましょう」
あくまでも明るエレヴェーターガールの声に、稚魚たちもはしゃぐ。
だが、そう言う傍から、昇降器ごと網に掬われるから、ほとんどの稚魚が海面の探索を全うしたことがない。

人工的に整備された川でも産卵期の鮭などが遡上できるように装置をつけた話。