2011年6月27日月曜日

傅書鳩を使ふ強盗

強盗は、相棒の鳩に餌をやりながら考えた。
「コイツがもし捕まって、焼き鳥にでもなっちまったら、
おれは一体どうやって暮らしていけばいいんだ……。」
鳩は、あちこちの金持ちの家に飛んでいき、こっそりとお金を頂戴してくるのが仕事だった。
強盗は、いまだ自分では脅しも盗みもしたことがない。
それでも「強盗」を名乗りたいが為に、「強盗だ!金を出せ」と彫ったナイフ形をした小さなプレートを鳩の首にぶら下げていた。
ある日、強盗が働く小さなパン屋(鳩の餌になるものが手に入りやすいのだ)に、本物の強盗が入った。
ナイフを付きつけられた強盗は動けない。
そこに仕事帰りの鳩がやってきた。
くちばしで突っつき、バサバサと暴れると本物の強盗は何も盗らずに逃げてしまった。
本物の強盗というのは、だいたい鳥が苦手なものだ。
パン屋ではその後、大掃除をしなければならなかったが、鳩はパン屋の親父に大層褒められ、強盗は前にもまして鳩を可愛がるようになった。
親父さんの助言で、鳩は伝書と見回りの仕事をするようになったので、泥棒はやめた。