2011年6月30日木曜日

無題

高い空に昇り、白い雲に乗ったら、暗い夜へ吸い込まれた。

2011年6月29日水曜日

無題

愚かな娘が「聖人君子」と崇められた故人を掘り出そうと試みると、大量の白骨が溢れてきた。

2011年6月27日月曜日

傅書鳩を使ふ強盗

強盗は、相棒の鳩に餌をやりながら考えた。
「コイツがもし捕まって、焼き鳥にでもなっちまったら、
おれは一体どうやって暮らしていけばいいんだ……。」
鳩は、あちこちの金持ちの家に飛んでいき、こっそりとお金を頂戴してくるのが仕事だった。
強盗は、いまだ自分では脅しも盗みもしたことがない。
それでも「強盗」を名乗りたいが為に、「強盗だ!金を出せ」と彫ったナイフ形をした小さなプレートを鳩の首にぶら下げていた。
ある日、強盗が働く小さなパン屋(鳩の餌になるものが手に入りやすいのだ)に、本物の強盗が入った。
ナイフを付きつけられた強盗は動けない。
そこに仕事帰りの鳩がやってきた。
くちばしで突っつき、バサバサと暴れると本物の強盗は何も盗らずに逃げてしまった。
本物の強盗というのは、だいたい鳥が苦手なものだ。
パン屋ではその後、大掃除をしなければならなかったが、鳩はパン屋の親父に大層褒められ、強盗は前にもまして鳩を可愛がるようになった。
親父さんの助言で、鳩は伝書と見回りの仕事をするようになったので、泥棒はやめた。

2011年6月20日月曜日

勲章(メダル)を貰った犬

お手伝いが得意な犬は、飼い主に「ご褒美は何がいい?」と聞かれると決まって「メダルを下さい」と言うのだった。
飼い主は、それは真面目で、おまけに裕福な人だから、「よい働きをした証に」という意味の言葉を入れた小さなメダルをたくさん鋳造してもらい、犬がよく手伝いをすると恭しくメダルを首に掛けてやった。
犬は自分の小屋に宝箱を持っていて、飼い主から貰ったメダルをきちんを仕舞っていた。
そして、近所の犬や猫や子供が良いことをすると(それは落し物を拾ったとか、老人に親切にしたとか、ささいなことだった)、宝箱からメダルを持ってきて、飼い主の真似をして恭しく渡すのだった。
そのうちに犬が年老いて死んでしまうと、街中の犬や猫や子供やかつて子供だった若者がメダルを持って飼い主のところにやってきた。
飼い主は犬にやったメダルをこんなにも多くの人が持っていたことに多い驚き、これからもメダルを作り続けると約束すると、街の人は大層喜んだ。

2011年6月17日金曜日

模造眞珠

アコヤガイを助けたら「模造で心苦しいのですが」と、ペロっと眞珠を吐き出した。
これが本物でないとしたら、世の眞珠は何だというのだろう。
いろいろと理解に困るが、ともかくこの模造眞珠は今までにみたどんなパールよりも美しい。

2011年6月14日火曜日

無題

我が家の自転車の籠に、枝付きの枇杷の実がどっさりと入っている。誰の仕業ですか。

2011年6月11日土曜日

無題

部分的に黒く染まった脱獄兵からの手紙が届く。

2011年6月10日金曜日

蛙は音樂が好き

蛙は合唱が得意なのはご存知の通りだが、上手い蛙も下手な蛙もいるし、実はコンサートマスターだっている。
一番声のよい蛙が月に向かって一声出せば、それに合わせて一斉に合唱が始まる。
レパートリーは幅広いから、蛙たちにもそれが幾つあるのかわかっていない。
もっともほとんどの場合、一曲は一回しか歌われることがない。

ところがコンサートマスターの蛙は、とある月夜に歌った歌がえらく気に入ってしまった。
名曲の力か、たまたま記憶力がよい晩だったのかはわからないが、三日も繰り返して歌った。
それに気がついたのが近所に住むピアノの得意な少年。
聞き取り、音を拾って、楽譜にした。

少年は、蛙世界の名曲を後世に残さんがため、オタマジャクシを集め、その歌を指導している。

2011年6月8日水曜日

海戦に参加した海豹

あるとき海豹は、機雷に遭遇した。
まったく迷惑な話だ、と海豹は思いながら、機雷を片付けることにした。
ふと見渡すと、そこかしこに機雷があるので、海豹は仲間に呼びかけて、全部撤去したのだった。人間のやることは、実に意味がわからない。
撤去した機雷は、近くにあった船に放り投げておいた。
船はまもなく炎上した。時限式の機雷が爆発したのだ。

そのころ陸上では、どこかの国の海軍の偉い人が作戦失敗の罪で罰せられていたが、投下したはず機雷がどうして船に戻ったのかわからずに、頭をひねっていた。

戦争の話を書くのは難しい。
読むのも難しい。
小説やマンガに出てくる剣豪が戦うシーンや、
スポーツの試合のシーンすら読むのが苦手なのだから、書くのなんか無茶だなぁ。

2011年6月6日月曜日

悧巧な蟹の一日

蟹はいつだって規則正しい生活をしている。
時計を持っていることは、人間には内緒だ。
落っことす人間がいけないのだ。
最近のは防水機能がしっかりしているから、蟹にも不自由なく使える。
時計を確認した蟹は、食事の時間であることを知る。
甲羅に砂を掛け、丁寧に身を隠すと、獲物を待つ。
じっと待っていると、秒針の音が気になる。
なんだか楽しくなってきて、時計を嵌めた鋏をカチコチと振って、陽気に踊る。
振り上げた鋏に、うっかり捕まってしまった魚を見て、蟹は多いに驚き、慌てて食べる。
満腹になって時計を見ると、ちょうど食事の終了予定時刻だった。
蟹は時計を持ってから、何故だか狩りに失敗することがなくなった。

元本『鳥獸蟲魚の生態』では、「マイア」という蟹が獲物を捕まえる話なんだけれど、マイアという蟹のことは、ちょっと検索したくらいでは出てこない。

著者の加宮貴一については、こんなページを見つけました。

2011年6月1日水曜日

鳥の裁判

子供が喧嘩をしていれば、インコがどこからともなく飛んできて、
「有罪!」「無罪!」と言う。
「有罪!」と言われた子供は、「ごめんなさい」を言う約束だ。
「無罪!」と言われた子供も、「ごめんなさい」と言う約束だ。

「有罪!」と言われた子供は、インコを頭に乗せて家に帰ることができる。
インコは母にも父にも見えないが、落ちた羽は見える。
羽を拾ったその手で、子供の頭を撫でる。
インコは「よいこよいこ!」と言う。