2011年5月27日金曜日

魚を捕る貝

魚を喰らうのが大好きな貝がいた。
貝を喰らうのが大好きな魚がいた。
その二人が広い広い海の中で、不幸にも出会ってしまったのだ。
ああ、なんということだろう。
貝は魚を見て、舌なめずりをし、魚は貝を見つけて涎を垂らして突進した。
だが、魚は貝を食べることが出来なかった。
貝があまりにも大きかった。
口に入らなかったどころか、魚よりも何倍も大きな貝だったのだ。

諦めて引き返そうとしたところ、ふよふよと夥しい数の白いワームが漂ってきた。
無意識にそれに喰らいつくが、ワームは巧みに身をかわして魚に纏わり付き、
気がついたときには貝の体内であった。
悔しいので、魚は真珠を見つけて飲み込んだ。
そのあとのことは、わからない。

タイトルを借りている『鳥獸蟲魚の生態』の中では「扇子貝」という貝が
白っぽい紐状のもので魚を捉えて食べる、という話でした。
オウギガイで検索してみますと、ヒオウギガイで出てきます。
他の貝についても、ちょっと検索したくらいでは、
本の中のような魚の捉え方については出てきませんでした。

この本、「さまざまな動物たちの悧巧なエピソードや感心する生態」を子供に紹介するような体の本なのです。
80年も前の本なので、中にはきっと今では誤りとされていることもあることでしょう。