2010年10月14日木曜日

霧にだまされた話

一歩進むごとに霧が濃くなるようだ。家を出た時には、乾いた夜空だったのに。
まっすぐ歩いているのかもわからなくなってくる。もういい、霧の深いほうへ歩こう。
しっぽのない黒猫がふわふわと飛んでいる。
すぐ前を歩く女の人はスカートが捲れあがっているが、尻がない。
「そうだ、明日はハンバーグを食べよう」
指をパチンと鳴らしたその瞬間、霧が晴れた。
黒猫はカナブンだし、前を歩く女の人は、髪の薄い小父さんだった。