2010年5月30日日曜日

その日、目が覚めてからメロンパンを食べるまでの出来事

サイレンみたいな目覚まし時計で、飛び起きる。時刻は6時45分。いつもと変わらぬ朝ではない。
メロンパンが強烈に食べたくなったのだ。
朝食は、トーストとヨーグルトとコーヒー。トーストにはジャムをたっぷり付けて食べる。たまにトーストするのが面倒なことがあって、そんな日のためにシリアルのストックがある。丁寧に焼けないなら、トーストなんか食べないほうがマシだ。つまり我が家にメロンパンはない。
メロンパンへの衝動は一層激しい。仕方がない。通勤途中でメロンパンを買おう。
いそいそと出勤の支度を整えコンビニへ向かう。途中三回水溜まりに填まった。晴れているのに。
コンビニに入ると「いらっしゃいませ」と元気な声が降ってきた。店員はキリンだった。天井を突き破っているから頭は見えない。
僕はメロンパンと缶コーヒーと小銭をレジに置いた。お釣が要らないように。
キリンが「ありがとうございまぁす」と言うので、メロンパンと缶コーヒーだけ持って、コンビニを後にした。また三回水溜まりに填まった。
駅のホームにはヤギが列を作っていた。ヤギを押しやりながら、ホームのベンチに腰掛ける。やっとメロンパンが食べられる。涎が垂れ始めていた。が、もう少しだけ我慢してコーヒーを一口。
プルタブを開けるとヤギが一斉にこちらを見たから、コーヒーが甘い。ようやくメロンパンだ。メロンパンを欲してからもう23分も経ってしまった。いつもの電車が来るまで、18分。たっぷり時間はある。
メロンパンを齧ったその瞬間、ヤギが一斉にホームに飛び起きりて線路を歩き出した。
ヤギもいなくなったホームでたった一人、メロンパンを食べる。あれ程に欲していたのに、たいして美味しくない。賞味期限が二年前の今日だ。