2009年5月3日日曜日

幻川を見る人

かつて川だった道、というのが所々にある。
道路の下の暗闇に水が流れていることもあれば、すっかり埋め立てられている場合もある。流れを無理矢理補正して、少し離れた場所で流れている川もある。
なんにせよ、そんな川だった場所を歩く時、私は水音を聞き、水流に逆らいながら(もちろん圧されながらの時もある)歩くわけで、大抵なことではない。周りの通行人がスタスタと歩く中、私はかつて存在した川の中を歩く。ただそれだけの違いなのに、人々は私を奇異の目で一瞥し、通り過ぎてゆくのだ。

(230字)