2009年5月31日日曜日

月を彩るものたち

雑貨屋で見つけた袋入りの青い硝子のビーズは、店主によると「アンティークだ」そうだ。
気に入った一袋を求め持ち帰り、金魚鉢に入れ、水を注いだ。
金魚はいない。ただビーズだけが底にある。

夜になると、なにやら金魚鉢が騒がしい。
「今夜は満月だ」「満月だ」
と口々にビーズが言う。ビーズも大勢いると声は大きくなるらしい。
ベランダに金魚鉢を置くと、ビーズたちがうっとりとするのが手に取るようにわかった。運んできたばかりだというのに、金魚鉢の水はぴたりと波を鎮める。
「なぜそんなに月が好きなんだ?」
と呟くと
「我々は月の女神セレーネのネックレスである」
といきなり仰々しく声を揃えて言うので、笑った。ほんとかしらん?
ともあれ、確かに銀色に輝く満月によく映える青だ。
そういえば、しばらく月を眺めていなかった。

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