2009年3月4日水曜日

猟奇的逃亡

包んだハンカチで拭っても拭っても血が滲み出てくる。この肉片があなたの肉体の一部であったのは、もう半刻は前のはずだというのに。
包んだハンカチの赤い染みは瞬く間に広がった。滲み出る血は段々と粘度を増し、私の手をべったりと汚す。小指以外の爪の中に血が入り込んでいる。

私はそっと血布を捲り、肉片を覗く。
何も覚えていない。ただの血塗れの肉片で、身体のどこを抉り取ったのかもわからない。それをしたのが私なのかもわからない。気が付いたら、手に丸まったハンカチを持っていた。中身を知り、逃げ出した。見つかることより、奪われることを恐れている。
この肉片があなたのものなのかもわからない。狂おしい程いとおしい。それだけが確信だ。