2008年8月20日水曜日

てるてる坊主

ちり紙の頭と、ちり紙の合羽だとお思いでしょうが、てるてる坊主は、てるてる坊主と呼ばれれば、その瞬間に単なる丸めたちり紙ではなくなります。
子供たちは祈ります。
「あーした天気にしておくれ」
そして、天気になろうとなるまいと、数日のうちにくしゃくしゃと握りしめられ屑籠に投げ捨てられます。
けれども、てるてる坊主はゴミ収集車には乗りません。
てるてる坊主にはてるてる坊主の「約束の地」があり、役目を果たした者もそうでない者も、そこに向かいます。彼の地で、永遠の眠りにつくのです。
墓地に向かうてるてる坊主は、もはやてるてる坊主の姿と思えない者や、雨ざらしで黒ずみごわごわした者もいます。サインぺンで書かれた顔が滲み苦悶の表情を浮かべる者も少なくありません。
「あーした天気にしておくれ」
てるてる坊主は、かつて己に向けられた祈りの言葉を唱えながら、進みます。
もう、どんなに唱えても、煙雨が晴れることはありません。