2008年5月20日火曜日

地球妖怪打ち上げ計画

 かつて「妖怪」と呼ばれた謎の生き物たちの二割ほどが地球外生物だと判明して久しい。ならば、今度は我々地球人がどこぞの星へ出向き妖怪となり、異星人の暮らしに驚きと恐怖と可笑しみを提供しようではないか。
 この「地球妖怪打ち上げ計画」の盛り上がりは急速に科学技術を発展させることとなった。これまで市民の宇宙旅行といえば宇宙ステーション滞在が主流だったが、誰もが異星に行けることが目標となったのである。
 いよいよ異星行きが現実味を帯びてくると、地球人はどんな妖怪になるべきか、が話題になった。特にニホンでは議論が盛んである。
「ありのままの我々でも異星人は驚くに違いない」
「やはり、衣装に拘るべきだ。妖怪は見た目で恐がらせないといかんだろう」
「驚かすノウハウをいくつか身につけてから異星に行くべきだ」
「古来の妖怪、つまり我々をおどかしていた異星人から学ぼうではないか」
「異星人ではない妖怪も数多い。それらの妖怪にも注目し、利用しよう」
「ニホンならでは、の妖怪がいい」
 いまや空前の江戸文化ブームだ。異星にぜひ持っていきたいと、見様見真似で提灯や唐笠を作る者も現れている。
「異星旅行のお供に提灯お化けは如何?」

『未来妖怪』投稿作