2008年1月31日木曜日

うるさい人形

瑠璃はなんとか口を動かそうと懸命だ。
「頑張って、瑠璃。もう少しだ」
僕はやさしく声を掛ける。
瑠璃は人形だ。ラピスラズリの瞳が入っているから、そう名付けた。瑠璃と暮らし始めてすぐ、彼女が何か言いたがっていることに、僕は気づいた。
「きみは人形だ。陶で出来た人形だ。でも言いたいことがあるんなら、きっと話せるようになる。まずはそのかわいいくちびるを動かそう」
瑠璃の青い瞳が濃くなった。
しばらくすると、瑠璃の口元は罅だらけになった。罅が増えるたび、瑠璃のくちびるは、大きく動くようになった。
「いいぞ、瑠璃。今度は声だよ、喉を震わせるんだ、できるね?」
もはやくちびるがどこにあったのかわからないほど顔が砕けた瑠璃だが、発声練習は四六時中休むことなく続いた。「ア」とも「ハ」ともつかない囁き声。
そしてついに、瑠璃が僕を見つめて言った。
「タス、ケテ、タスケ、テ、タスケテ、タスケテエエエエエエエエエエエエエエエエエ」
瑠璃の絶叫は、まだ止まない。