2007年4月14日土曜日

血の値段

「あたしの血は高いよ!」
往来の真ん中で女が叫ぶ。
青白く骨張った身体。長く黒い髪だけがやけに艶やかである。
「あたしの血を一滴飲めば、精力絶倫!ねぇ、どうだい?お兄さん、買っておくれよ」
通りかかった若者に品を作って見せる。女の足元にはすでに赤黒い染みが広がりつつあった。
「あたしの血を二滴飲めば、無病息災」
「あたしの血を三滴飲めば不老長寿。ほら、おばあさん、あっという間に若返るよ!」
口上が進むにつれ女の足元は血溜まりは大きくなっていく。年寄りがニタニタと女の股ぐらを覗き込む。
「あたしの血を四滴飲めば、不老不死。さあ、じじい!覗くんなら買いな!」
ますます顔は青白く、髪は豊かに輝く。
「あたしの血を十滴飲むと、ほら!」
女は己の血の海に沈み、溺れた。