2006年9月23日土曜日

玉葱魔術

玉葱を切った時に流した涙が、ようやく10ml溜まった。
ビーカーを見つめて、うふふふ、とわざとらしく笑う。
わたしは伸ばしていた左手の小指の爪を切り素早くビーカーに入れた。
涙の中に落ちた爪は、「じゅ」と少し泡立った。
しばらくすれば、芽が出て花が咲いて、実ができるはずだ。実は、すなわちわたしの分身。
分身を養うのは大変らしい。「分身」は玉葱しか食べない。それも大量の。
でも、たぶん大丈夫。分身のために土地を買い、玉葱畑を作って備えてきたのだから。