2006年7月20日木曜日

雨を降らせに行く娘

晴れの日が続くと娘はフイと旅に出る。初めて出て行ったのは中学校に入って間もなくのことだった。
「雨が降らないから、ちょっと行ってくる」
どこに行くのか、いつ帰るのか、学校はどうするのか、誘拐されやしないか。引き留めも聞かずに呆気なく出て行った。一人娘が戯言を言ってリュックも背負わず出て行って、私はこれ以上ないくらいに動揺した。
雨が降った翌日には必ず帰ってくるとわかってからは、ずいぶん気楽に送り出せるようになった。
「ねぇ、どうやって雨を降らすの?」
と眠っている娘に聞いてみた。起きている時には絶対に教えてくれないから。
「雲を絞るんだ。雑巾みたいに」
そういえば、雨を降らせて帰ってきた娘の手のひらはいつも真っ赤だ。
今年の大掃除は、拭き掃除をやらせよう。

*絞*