2005年3月7日月曜日

春の使者

梅の花は咲いた。
「さてと」
私は一年振りにステッキを取り出した。おじいさんと呼ばれて腹が立つことはないが、杖を使うほど足は衰えてない。
「仕事だよ」
ステッキのお役目の時が来たのだ。
私はステッキを持って散歩に出る。石を見つけてはステッキの先でちょいちょいと突く。
蝶が飛び始める前に、全部済ませなければならない。
石にだって春の訪れを知らせてやらなきゃ、えらいことになるのだから。
石ころを突くのは老人の特権だ。