2005年1月15日土曜日

酔いしれて黄色

いつものバーに入ると席は既にいっぱいだった。
十四席しかない小さな店だ、珍しいことではない。
髭ヅラのマスターがすまなそうに眼差しを送ってきた。
その眼差しに苦笑いが含まれているのに気付いて、もう一度店内を見渡すとカウンター席のひとつに巨大なタマゴが居座っていた。
しかし大きいこと以外、普段食べる鶏卵と変わらないようだ。
タマゴは頬を上気させ、何事かを語っていた。
客はみなタマゴの話を真剣に聞いているようだ。
私は酒を諦めて帰ることにした。
「また来るよ」
マスターにそう言って店を出ようとすると
タマゴ以外の全員がこちらを振り返り、私を睨みつけた。
二十六個の目玉はドロリとした黄色い光りを放っていた。