2003年12月31日水曜日

湯煙の中をさまよう主水くんのこと

広くて湯煙が立ちこめる浴場内を歩き回るのは難儀だ。
どんどん身体が熱くなり、主水くんの息は荒くなっていた。
大勢の人のざわめきとあちこちで流れる湯の音が反響する中でションヴォリ氏を呼ぶ声もかき消された。
「あ、あの洗面器は」
主水くんは桃色の洗面器の周囲にいる人々を見渡した。
そして湯に浸かっているションヴォリ氏を見つけた主水くんは、ションヴォリ氏ではない名を口にしたのである。