2003年11月26日水曜日

お客たちが一斉にしたこと

薄暗い舞台に現れた摩耶に気づいた店内はしんと静まり返った。
お客が一斉皆耳に手を当てて息を殺しているのだ。
もちろん主水くんも耳を塞いだ。
掃部くんは変な動物の皮を頭からすっぽりかぶっているから耳を塞ぐ必要はない。
ションヴォリ氏はコルクで作った耳栓をした。
摩耶は唯一無二の声で歌い始める。
摩耶はこの喫茶店の、いや、この街の歌姫だ。
その声を目当てに店に来るものも多い。
昼も夜も街の人たちのために摩耶は舞台に立つ。
ただし、どういうわけか耳を塞がなければその声は聞こえないのだ。