2003年10月17日金曜日

アザミの刺が

母の肩こりはそれはそれはひどいものだ。
毎晩揉んでいる私も肩が凝ってしまうのだが、自分の肩と母の肩を触り比べると
やはり母の方が硬いので諦めて風呂上がりの母をマッサージする。
ある晩いつものようにマッサージしていると母の肩がだんだんと冷たくなっていった。
普通揉めば少しは暖かくなるはずなのに、母の肩は氷のようで私の手も感覚がなくなった。
「ちょっと母さん?大丈夫?」と声を掛けるが反応はない。
私は急に不安になりながらも手を休められなかった。
私は掌に違和感を覚えてようやく母から手を離した。
母の肩からはアザミが生えていた。右にひとつ、左にひとつ。
赤紫の花がやけに瑞々しい。私は慎重にそれを抜いた。
根には赤黒い泥がたくさんついていた。
そばにあった広告紙にくるんでゴミ箱に捨てた。
「ありがとう。気持ちよくてウトウトしちゃった。どうしたの、顔が真っ青よ」
「なんでもないよ。なんか変なとこない?痛くなかった?」
「全然」
私はその日から一度も母の肩を揉んでいない。