2003年8月31日日曜日

絵葉書

「……は、のどかで良い所だ。昨日は市場で出会った老夫婦の家に泊まった。初めての経験だよ。もしも、この旅に出なかったら一生なかったことだろうな」
あてのない旅に出た友からの絵葉書を読み、俺は深いため息をついた。
辛い事が重なっていた彼に対し、俺は自分では気付かぬ内に優越感を持って接していた。
なのに写真からも文面からも青い空が溢れている。俺は焦った。
あいつは自分を取り戻した。
だが未来は見えないままではないか。
羨望と苛立ちが交じり合う。
彼が旅から帰ったら、俺は一体どんな顔をすればいいのだろう。