2003年5月28日水曜日

黒猫のしっぽを切った話

「黒猫だ!」
小父さんはベベを急停車させ、急発進した。
ぼくの身体はガックン、と大きく揺れた。
「どうしたの?」
「あれを追い掛けるぞ」
小父さんの顔は真剣だ。
路地に入り、小さな角をいくつも曲がった。
やがて諦めたのか黒猫は逃げるのをやめた。
「よぉ、182年振りだなぁ」
「もう、勘弁して下さい」
混乱するぼくにむかって小父さんは言った。
「少年、そいつのしっぽを切るんだ」
黒猫はぼくに尻を向けた。
小父さんに渡されたハサミでパチンとやると黒猫は言った。
「これであと200年は生きることになってしまったよ」