2002年7月19日金曜日

猫とおじいさんとハムサンドの話

朝から喫茶店でノートを広げるようになって、一ヶ月。
新しい友達ができた。猫と、おじいさん。
猫の友達も、おじいさんの友達も、はじめてだった。
猫は店のカウンターの端でいつも寝ていた。
通い始めて一週間くらいで、ドアを開けると挨拶してくれるようになった。
アイスカフェ・オ・レとハムとチーズのサンドウィッチを頼んで、
彼の後ろのテーブルに座ると、彼は、私の方に向き直って寝る。
そして、毎日この喫茶店で朝食を取るおじいさん。
おじいさんはある日「いつもがんばってるね。何の勉強かい?」と私に話し掛けた。
おじいさんはいろんな話をしてくれた。毎日自転車でこの喫茶店にくること。
絵を書いていること。孫が二人いること。
猫はもう10年もこのカウンターに居座っている、ノラだということ。
そしてこの国でかつて起きた悲しい出来事について……。

通いはじめて5ヶ月、おじいさんと猫にお別れをしなければならなくなった。
私は試験に合格し、遠くの学校へ行くことになったのだ。
猫はいつもよりも甘えてくれた。
おじいさんは、うさぎの絵と筆をくれた。

今はもう、猫は死んでしまったけど、
おじいさんは元気にうさぎの絵を描いている。
私は、この喫茶店で働き始めた。